フィリップが友人のカイとその彼女であるトレイシーと一緒に自宅でTVゲームをするお話。

登場人物

フィリップ

T:トレイシー

K:カイ


ベルエア邸 リビング

T:ねえ~、ピザ遅くない?

P:渋滞でもしてんじゃね?

K:それか、宅配員が迷子になってるとか。

T:ここは世界一の高級住宅街を見下ろす丘のてっぺんよ?分からないなんてことないでしょ。第一、ナビもスマホもあんじゃん。

K:それもそっか。

P:家の話で思い出したけど…、今度、オレ引っ越すことになったんだ。

T:ええ?なんでそんなことすんのよ。ママとケンカでもした?

K:そうだよ~、こんな豪邸に住んでるのに。

P:そうじゃない。……同棲するんだ。

T:同棲ッ!?あんたが!?

K:だ、誰と!?

P:おまえらも知ってるやつだよ。名前は――。

T:ああーー!待ってフィリップ、当てさせて。

K:(フィリップに彼女いたっけ?)

P:トレイシーとは、最近いっしょに仕事もしてる。

T:は?うっそ、誰よマジで…(リリーは不倫相手のおっさんとまだ切れてないし、ハンナはゲイでしょ…。エラは元カレとくっついたり離れたりしてる…。あと最近いっしょに撮ったの誰だったかな~…)ダメだ、ヒントちょうだい!

P:あだ名は、アレックス。

T:…ってことはアレクサンドラとか?もしくは…アレクシス?そんな名前の子と一緒に撮った覚えないけど。

K:俺もアレックスなんて子知らないなあ。

T:全然わっかんない!もういいや、フルネームどうぞ!

P:アレハンドロ…シルバラード。

T:ハァアーッ!?なにそれ冗談でしょ!?

K:あのアレックス!?

T:フィリップ、うちらをからかってんの?

P:本当なんだ。オレら、付き合ってる。

T:いつからァ!?

K:うわぁ~…まったく分からなかった。


T:なるほどね…。それにしてもびっくり。

K:俺は驚いたときの君の声にもびっくりしたよ、トレイシー。

P:でもあいつモテるからさ…。最初は疑ってたんだ。

T:そりゃそうでしょー。エグいくらいモテてるもん、アレックス。…そうだ!!

K:何っ!?

T:それがさ、いつだったかフレッド(※)に会ったとき、「アレックスが好きな子と初デートだって浮かれてて悲しい」って沈んでたの。

P:あいつゲイだったのか?

T:知らなかったの?オープンにしてるじゃん。

K:俺も初めて聞いた。

T:あんたら鈍すぎでしょ…。

P:ケンジーがアルのことを狙ってるのは、耳に入ったことがあって知ってたんだけど…、フレッドは知らなかったな。

T:ケンジー・ラスキン?

P:そう。

T:ああ~見境ないからね、あのビッチ。

K:トレイシー、そんな言い方しちゃダメ。

T:だって事実じゃん。

P:お、ピザ来たっぽいな。ちょっと出てくる。


P:おーい、お待ちかねのピザだぞー。

K:やったぁー!

T:ありがとー!にしても、フィリップが同棲かー。

K:俺らのほうが半年先に始めたから先輩だね。

T:あのさ…あんたは先輩面できる立場じゃないでしょ?ちょっと、言ってるそばからもうー!ピザ持った手であちこち触んないでよね、カイ。

P:おまえら、彼氏と彼女っていうか息子と母親みたいだよな。

T:だって聞いてよフィリップ、こいつときたらトイレのフタどころかドアまで開けっぱなしのときあるんだから。

P:うっわ…マジかよ、カイ。

T:呆れるでしょ?私がいなきゃ爪すら切れないんじゃないかってレベル。

K:爪くらい切れますぅ~。

T:ただの例えよ。だから、フィリップも相手と妥協しつつ、譲れないとこはちゃんと話し合いなよ?ケンカだってたまには大事なんだから。

P:ああ。でも、あいつのほうがオレの何倍もしっかりしてるから、そこんとこは大丈夫だと思う。

T:アレックスってちゃんとしてそうだもんね。うらやましー…こいつと取っ換えてほしいわ。

K:やだよ!俺、マジにトレイシーがいないと生きていけないもん。トレイシーの作る料理、見た目はちょっとぐちゃっとしてるけど、美味いし大好きなんだ。がさつそうに見えるけど、細かいところまで気がきくし。宇宙一のガールフレンドだよ。

T:ばっ…かじゃないの!?

K:それにさぁフィリップ、トレイシーっていつもはこんなだけど、本当はすごく優しくて涙もろいし、俺に甘えてくるときなんて、もうすっごく可愛いんだよ。

T:何言ってんのバカ!!

P:おい…、のろけるならピザ持ってとっとと帰れ。

K:痛っ、ごめんってトレイシー!

T:黙ってピザ食べてろ!

K:そうだ、引っ越しするなら手伝うよ、フィリップ。父さんのピックアップ借りられるし、あれなら荷物が一気にたくさん積めるだろ?

T:たまには良いこと言うじゃん、カイ。私も手伝わせて!

P:すげー助かるよ。ありがとな。じゃあ日程決まったら知らせるわ。もし予定入ってたら無理してくれなくていいから。

K:うん。

T:…とか言っちゃって本音はねー、アレックスとあんたが並んでるとこ見てみたい♡

K:俺も♡

P:おまえらなー…。別に面白くはねえと思うぞ。

T:いやいや、フィリップ・ベルエアとアレックス・シルバラードよ?最高に映えるでしょ。

K:うん。

T:友だちの引っ越しだから手伝いたいってのも本当の気持ちだよ。でもさ、新居にもキョーミあるじゃん?

K:うんうん!

P:ふつーの部屋だよ。

T:どのくらいの大きさ?

P:んー…オレんちのバスルームくらい?

K:それは…。

T:たしかに…ごく一般的なアパートの大きさね…。ここにいると麻痺してくるけど。

P:オレも最初は狭いかと思ったけど、2人なら十分かなって。

T:うちらのとこもそのくらいだから十分よ。飽きたり広い部屋が欲しくなったら、また引っ越せばいいんだしさ。

K:狭いと掃除もラクだよ。

T:ミスター・オブライエン、貴方がまともにお掃除したことありましたっけ?

K:あの、いえ…あんまり、全然、無いです…。

P:ははっ、してねーのかよ!

T:ほんっとテキトーよね、こいつ。

K:明日からします!

T:え、何ィ?いつからァ?

K:今日から、…です。

P:なあ、ピザ食ってさっきの対戦の続きしようぜ。次こそはオレの勝ちだからな、トレイシー。

T:連敗記録更新がんばってくださーい♡

K:俺は見てるほうが楽しいから応援するね!もちろんトレイシーを!

P:おい、友達だろ?オレの応援もしろよ、裏切り者。

T:私が勝ったら…、つっても楽勝だけど、うちらとダブルデートしない?

P:なんだよそれ…。13歳のガキじゃあるまいし、ヤダ。

K:えー!楽しそうじゃん!俺はしたいなぁ。

T:ハイ、多数決で決まり。

P:横暴だろ、こんなの!

T:ほら、試合始まるよ。

P:クソッ、ぜってー勝つ!!

K:がんばれトレイシー!

T:まかせなさい。

END

(200527)