アレックスが友人たちにフィリップを紹介するお話。

登場人物

P:フィリップ

A:アレックス

S:シャマル

G:ジェラール


街角のカフェ デート中

A:待たせてごめん、フィリップ。トイレがやけに混んでてさ。そろそろ行こうか。

P:ああ。そうだアル、さっきスマホ鳴ってたぞ。

A:ほんと?あ、シャマルからメッセージだ。何だろう。

S:“今ジェリーのとこ。もうすぐ終わるから、このあとヒマならメシでも食わね?”

A:ああ、ジェリーの店にいるのか!

P:ジェリーって?

A:友達のシャマルの行きつけの床屋の理容師。本名はジェラールっていうんだけど、すごく面白くて明るい人なんだ。20代で独立して、――今は32歳くらいだったかな――ひとりで店を経営してる。僕とシャマルにとっては兄みたいな存在。そうだフィリップ、このあとの予定少し変えても大丈夫?

P:どこか行きたいとこでもあんの?

A:君を友人たちに紹介したいんだ。もしよかったらシャマルとジェリーに会ってくれない?シャマルには、君との関係は打ち明けてあるし。

P:ああ、いいぜ。オレもおまえの友達に会ってみたい。

A:ありがとう!2人とも話しやすいから、きっと君ともすぐ打ち解けると思うよ。じゃあ聞いてみるね。

ジェリーの理容室

A:やあ、ジェリー。ひさしぶり。

G:やだ、誰かと思えばアレックスじゃない!今夜ヒマなら私とデートしない?

A:はは、相変わらずだね。シャマルのカット、もう終わってる頃かと思ったんだけどまだかかりそう?

G:あとはブローだけよ。

S:よお、悪ィな。もうちょい待っててくれ。

A:シャマル、君がOKしてくれたから、彼も連れて来たよ。さあ入って、フィリップ。

S:おおーフィリップ、会いたかったぜ!アルからよく話は聞いてたから、はじめましてって感じしねーけどな。俺はシャマル・ラティーフ。

P:オレも、アレックスからあんたの話はよく聞いてる。会えて嬉しいよ、シャマル。

A:ジェリー、彼は、

G:もちろん知ってるわよ!こちらの可愛い坊やはフィリップ・ベルエアでしょ!雑誌で見たことあるわ。ホンモノのほうが10倍は可愛いわね。はじめまして、フィリップ。私はジェラール・ムーンよ。みんな私をジェリーって呼ぶから、あなたもそうしてね♡

P:はじめまして、ジェリー。

G:でも、アレックスとお友達だったなんて初耳。

S:オトモダチもなにも……。なあアル、ジェリーになら教えてもよくね?

G:なによ、もったいぶらずにさっさと言いなさい。

A:僕はかまわないけど…フィリップはどうかな。

P:……オレは…おまえがいいならかまわない。

A:ありがとう、フィリップ。ジェリーは口が堅いから安心して。

G:ちょっと、ちょっと!一体なんなの~!?

S:ジェリー…実はな、こいつら付き合ってんの。

G:……ハアァッ!?ウソでしょ!?

S:だよな~、俺も腰抜かすほど驚いたもん。

G:ちょっとアレックス、どういうこと!?私みたいに女も男もイケるなら早く言いなさいよ!いっつも違う女連れてたからあきらめてたのにーー!

A:僕は…男の人というより彼のことが好きなんだ。ごめんねジェリー。

G:もぉ~~~今夜はヤケ酒ね!付き合いなさいシャマル。

S:はぁ!?勘弁してくれよ!どうせこの店ヒマなんだから、俺のブロー終わったら店じまいして好きなだけひとりで飲めって。

G:ハァイかしこまりましたァ~!サイドに大文字で”ASSHOLE”の剃りこみですね、お客様♡

S:誠に申し訳ございませんでした。非礼をお詫びしますので、そのカミソリをしまってください。

G:それで~?何がどうなって付き合うことになったのか聞いてあげるわ。お兄さんにぜんぶ話しなさい。

S:俺はこないだ聞いたばっかだけど、もっと詳しく聞きたい。

A:じゃあ…、僕がフィリップに一目惚れしたところ(※)からね。

G:あなた、一目惚れしたの!?まあ~…この可愛さならしょーがないわね…。

P:(なんだこの公開処刑…)

※詳細は漫画『Honey』を参照


S:あーーおもしろかった!

G:そんなツンツンしてたフィリップちゃんが、今じゃアレックスに夢中ってわけねェ~~うらやましいわー。

P:………。(誰かオレをここから連れ出してくれ…)

S:ところでアル、せっかく床屋来たんだし、お前もたまには俺みたいな髪型にしてみれば?案外似合うかもしれないぜ?

A:んー…、でもフィリップがこの髪型似合ってるって言ってくれたから、あんまり変えたくないんだよね。そういえばこないだも…、

P:ちょっ、おい、アレックスやめろ!

S:はいはーい、聞いた俺が間違ってましたー。

G:そうよ、いちゃつくなら他所行って。傷心の私には目の毒よ。

A:でも、話を聞いてくれてありがとうジェリー。

G:いいのよアレックス、あなたの話ならいつでも聞くんだから。それにフィリップも。デート中にわざわざ来てくれたんでしょう?ごめんなさいね。

P:いや、オレも会えて嬉しかったよ、ジェリー。

A:営業中だったのに悪かったね。

G:気にしないで!どうせ今日はこのクソ坊主が最後の予約なんだし。

S:言い方ひどくない?

G:またいつでも遊びに来てね、2人とも。あ、そうだわ。あんたたち3人、この後時間ある?ヒマなら、私といっしょにちょっと早めのフレンチディナーなんてどう?素敵な出会いに乾杯ってことで、フルコースごちそうしてあげちゃう。

S:マジで!?ごちになります!

P:

A:そんな…、悪いよ。

G:いいのよ、アレックス。うちのお客さんがこの近くにお店を開いてるんだけど、すごく美味しいエスカルゴ料理を出してくれるの。

S:えぇ~~~あんなの虫じゃん。

G:ご来店ありがとうございました~♡さ、アレックスとフィリップは私についてらっしゃい。お兄さんとディナーデートしましょ。そこのお店、良いワインもたくさん揃ってるのよ♪

P:ありがとう、ジェリー。

A:僕あんまりフレンチのコース料理は食べたことないからドキドキするな。

G:そんなに構えなくてだいじょうぶよ。コースと言っても気楽に入れるカジュアルなお店だし、とっても家庭的な雰囲気だから。

S:ちょっ、まって、俺も行きますってば!

END
(200515)