フィリップとアレックスが友人たちを招いて新居祝いパーティーをするお話。

登場人物

P:フィリップ

A:アレックス

S:シャマル

T:トレイシー

K:カイ


フィリップとアレックスの部屋 玄関

S:よう、ひさしぶりー!

A:シャマル、来てくれてありがとう!

S:おっ、けっこう良い部屋じゃん。

P:あんたも元気そうで良かった。

S:そうだ、これジェリーから預かったんだ。ワインとメッセージカードな。んでこっちは俺の。チーズとナッツ類。

A:気を遣ってくれなくていいのに。

P:紫ラメのキスマークがついたカード…ジェリーらしいな。

A:綺麗だね。あとでゆっくり読もう、フィリップ。

P:ああ。

S:メシも酒も何も持ってこなくていいって招待状で言ってたけど、やっぱ色々あったほうがいいと思ってよ。

P:悪ィな、シャマル。ありがとう。

S:いや~、ふざけてコンドームでも持ってくるかと思ったんだけど、それはさすがに…。

A:足りてる。

S:ですよね♡

P:!!(そんな笑顔で言うなよバカやろう……)

A:…ん?誰かドア叩いてる。

P:アレックス、あいつらだろ。さっき受付通したから。

K:ヤッホー、来たよぉー!

T:ハーイ。これ、私たちから。フルーツとお花。ギフトなしで、ってカードに書いてあったけど、やっぱり持ってきちゃった。気持ちだから受け取って。

K:風船もいっぱいあるからね!

A:カイ!トレイシー!こんなにたくさんありがとう!

P:サンキュー。引っ越しのときも世話になったな。

T:いいんだって。

K:引っ越し手伝えて楽しかったよ。

S:おお、おまえらも呼ばれてたの。

T:あれ、シャマルじゃん。

K:シャマルだ!

A:君たち、知り合いだったのか。

T:うん。私とは何度か一緒に仕事してる。

P:そういえば、どっかのブランドの企画で撮ってたの見たことあったな。

K:俺は1度も一緒になったことないんだけど、トレイシーの撮影についていったときに会って話したんだ。

A:へえ。

S:そういうこと。

T:でもカイとシャマルじゃ路線が違うから、この先も一緒に撮影することってめったにないんじゃない?

A:路線?

K:シャマルは俺と違ってなんかこう…セクシィ~な感じのが多いもんね。

P:たしかに。じゃあなんでトレイシーがシャマルと一緒に撮ったんだ?

T:フィリップ…どういう意味よ、それ。私はセクシー路線でもいけるっつの。

K:そうだよ!セクシーでもキュートでもどっちも俺は好きだよ。ね、トレイシー?

T:バカ、離れろ!

A:あははっ!

S:おまえら相変わらずのバカップルぶりだな…うらやましいぜ。

K:シャマルは誰かと付き合ってないの?こんなにカッコいいのに。

S:…おまえ、ほんといいヤツだな、カイ…。おまえみたいに、俺の良さが分かる女がいれば困ってねえんだけどさ…。

A:ケンジーと別れてから、誰もいないのか?

T:ケンジーって、ケンジー・ラスキン?

S:…ああ。

K:あれ、ケンジーってアレックスのこと狙ってたんじゃなかったっけ。

P:

T:このバカ、余計なことを…っ!

K:えっ、俺なんかダメなこと言っちゃった?

P:……。

S:おい…まさかあいつ、アレックスにまで手を出そうとしてたのか!?

A:1度だけ誘われたことはあった。でも僕にはフィリップがいるから断ったんだ。…黙っててごめんね、フィリップ。

P:…別に浮気したわけでもねえし、ナンパなんてしょっちゅうされるだろおまえ。謝ることじゃねーよ。…それに、ケンジーがおまえのことを狙ってたのは知ってたんだ。

A:

S:そうなのか!?

T:実は、私とカイはそのことをフィリップから聞いたことがあったの。気を悪くしたならごめんね…シャマル。このバカが口滑らせて。

K:ごめん…。

S:いや、もうあいつとはとっくに切れてるし、俺は気にしてねーから謝んなよ。なにせ、あのケンジーだしな。目の前にアレックスがいたら、何すんのかくらい想像はつく。

A:でも、どうしてそれを知ったんだ、フィリップ?

S:そうそう、俺もそっちのほうが気になった。

P:…実は――。


S:あんのクソビッチ~~……。

K:キープが3人いるのに、さらにアレックスを狙うなんてスゴい。

A:もはや貫禄すら感じるね…。

T:リリーもたいがいだよ。懲りずにまだオッサンと不倫中みたいだしさ。

P:だな…。

K:でもさ、シャマルはいいヤツだもん。俺が保証する。次行こう、次~!

T:そうよ、ダメならスパッとあきらめて仕事に生きな!

S:慰めになってねえよ、トレイシー。

P:思ったんだけどさ、あんたはもっとおとなしめの子のほうが合うんじゃねーの?

A:ああ、たしかにね。ケンジーやリリーとは真逆のタイプのほうが合いそうだ。

T:でもシャマルの好みじゃないでしょ、そういう子って。

K:手をつなぐだけでドキドキして真っ赤になっちゃうような子とか?

T:この業界で探すにしても、街でテキトーにナンパするにしても、シャマルのナワバリにそんな絶滅危惧種いるわけ?

A:フィリップがいたんだから、きっといるさ。

P:…ハァッ!?

S:アル…参考にならねえ例を出すな。

T:そう、そいつは例外中の例外。

K:(フィリップは絶滅危惧種だったのかあ…)ねえねえ、トレイシー、これ美味しそうだよ。今度作ってみたら?

T:ハ?たまにはあんたが作りなさいよ。

A:カイ、作りたいならレシピ教えようか。

K:俺にできるかなあ…。

A:簡単だよ。

S:そうだぜ、カイ。やってみろ。トレイシーが惚れ直すぞ。

K:ほ、ほんとに!?

P:それなら心配ねえだろ。これ以上無いほど惚れてるし。

A:そうだね。

T:!?なにニヤついてんのよあんたたち!今日の主役はフィリップとアレックスでしょ!私たちの話なんてどーでもいいの!

S:なにはともあれ、乾杯しようぜ。せっかく良いワインもあることだしよ。

K:だね。おめでたい日だった。

T:話に夢中でそれすら忘れてたわ。パーティーのメンバーはこれで全員なの?

A:うん。今日スケジュールが空いてるのがこのメンバーだけだったんだ。

S:このくらいこぢんまりしてるほうが気もラクでいいんじゃね?

K:うんうん。

P:じゃあみんな、グラス持ってくれ。…今日は来てくれて本当にありがとう。オレもアレックスも、引っ越したからって別に何が変わるってわけじゃねえけど…、あらためてこれからもよろしくな。

A:そうだね。愛する人と、素晴らしい友人たちと共に、新しい部屋でこの日を迎えられたことを心から感謝します。乾杯!

S:カンパイ!

K:カンパーイ!

T:おめでとう2人とも!…はい、じゃあ新居探検していい?

A:もちろん。

K:あっ、トレイシーずるいよ、待って!俺も探検したいー!

P:探検するほど部屋ねえぞ…。

S:ったく、ガキかあいつら…。じゃ、俺はメシでも食おっかな。あいつらのぶんの酒も飲んでやろーっと♪

A:…フィリップ。

P:ん?

A:愛してる。君がここにいてくれて幸せだ。

P:!?何を急に…!!

S:(えっと…今……キスしたよな?とんでもないものを見てしまった…)

END

(200613)