『Morning dew』の後日談。

アレックス、シャマル、ベレニス、ロクサーヌたちが、フィリップの実家に集まってバーベキューするお話。

登場人物

フィリップ

アレックス

ロクサーヌ

ベレニス

シャマル

ヴァレリー


ベルエア邸 庭

A:フィリップー、肉焼けたよ!

P:おう、サンキュー。

R:ちょっと、フィリップ、こっちこっち!

P:なんだよロクサーヌ。なんで小声?

R:あんたの彼氏、立派にピットマスターやってんじゃん。

P:ハァ!?かッ、彼氏じゃねーし!

R:あんたがあたしに隠し事できたことあった?見てれば分かんのよ。

P:……SNSに上げたら、姉ちゃんでも許さねえからな。

R:えっ、さっき上げたけど。

P:もう!?消してよ!!

R:なに焦ってんの。家族や友人とバーベキューしてますーってだけの写真だから、なんもヤバくないでしょ。

P:でもあいつらが姉ちゃんと一緒にいるの見られたら、姉ちゃんの新しい彼氏候補だと思われねえ?

R:安心して。今フリーだけど、あんたの友達に手出すほど飢えてない。

P:それ何ひとつ信じられねえんだけど。

R:だって、1人はあんたの彼氏だから、超可愛くてもノータッチじゃん?で、もう1人のは…、あいつ、なんであんなスカしてんの?見た目は悪くないけどさ。いつもああいう感じ?

P:いや、シャマルは…。たぶん、緊張してるんじゃね?いつもはもっと親しみやすい感じだよ。(オレが「ロクサーヌはクールな男が好きだ」って言ったせいだな…)

R:ふーん。どっちにしろ、あたし年上好きだしね。ガキにはキョーミ無いから。

P:(すまんシャマル…)

R:それより!あんたたちのなれ初め聞きたい!ベレニス、ちょっと来て!

B:なに~?早くお肉食べたいのにー。

R:いいじゃん、食べながらで。ベレニスも聞きたいよね?フィリップと彼氏のなれ初め。

B:え、フィリップに彼氏!?いつから!?

P:ロクサーヌ!!

B:どうして教えてくれなかったの、フィリップ。どんな相手?

R:あそこにいる可愛いラティーノのピットマスターくん♡

B:ええっ!?ほんとに!?

P:………。

R:見てりゃ分かるでしょ!

B:ええ…全然分かんなかった…。お肉焼くの上手な子だなあとしか…。

R:もぉ~どんだけ肉好きなのよ。ベレニスってば鈍すぎ。

B:それで、きっかけは?

P:…絶対言わなきゃダメなやつ?

R:あたしたちから逃げられると思ってんの?

B:聞きた~い!あ、ねえこのサラダも美味しい!あの子料理上手だね。

P:ああ…、母親がメキシコ料理のインストラクターやってて…、それで、

R:マジ?あたしにもちょうだい!

B:いいよー、ほら食べてみて!

R:さっさと吐きなフィリップ。あ、ほんとだ、このドレッシングも美味しい。

B:でしょー?

P:うぅ…。(いっつもこうだ…)


S:なあ、どう思う?

A:どうって、何が?

S:ロクサーヌだよ!俺って脈あるかな?

A:…どうだろ…。僕にはよく分からない。

S:さっきフィリップと話しながらこっち見てたろ?俺のこと見てたって、あれは!目が合った気がする。

A:本人に聞いてみたら?いつも女の子には君からガンガンいくだろ。

S:おい、忘れたのか?「ロクサーヌはクールな男が好きだ」ってフィリップが言ってたろ?

A:そっか…。あまり押しが強い男は嫌われるかもね。

S:どうやってキッカケ掴むかが問題だよなー。でもあの感じは、遅かれ早かれあっちから来る気がするぜ。

A:だといいね。


V:ボンジュール!みんな楽しんでる?

P:!?どうしてママがここに!?来月までサントロペのはずだろ!?

R:あたしが教えたの。でも、まさか帰ってくるとは思ってなかった。

V:ひさしぶりね、ベリー、ロキシー!ピップはちょっと前に会ったわね。みんないい子にしてた?

B:ママも元気そうで良かった。

R:いい子にしてた~!

P:…嘘つけ。

R:あ?なんか言った?

P:べつに~。

V:はい、そんないい子たちには差し入れよ!

B:あーっ!トマーゾのお店のピザ!ママ大好き!

R:ちっちゃい頃からここのピザ好きだよね、ベレニス。

V:でしょ?そう思って。

P:ママ、休暇中だったんじゃないの?

B:サイラスたちも一緒?

V:スタッフは彼らの家族と一緒に向こうに残してきたわ。せっかくの休暇だもの、楽しんでほしいでしょ。だからここまではボディーガードのハンスがついてきてくれたの。「契約なんて気にしないで。ひとりで平気だから」って言っても聞いてくれなくて。

R:ああ、あの無口なイケメンマッチョね。彼がいるならジャングルでも砂漠でも安心だわ。

V:だって、レクシーを呼んでうちでパーティーするっていうじゃない?ママだけ仲間外れなんてズルいわ。だから急いで来ちゃった♡

P:…!!(わざわざフランスから…)

R:レクシーって?

B:誰のこと?

V:あら、ピップの彼氏よ。セクシーなアレックスだからそう呼んでるの。もうお姉ちゃんたちには紹介したんでしょ?

R:レ・ク・シィィ~~?あたしもそう呼ぼーっと。

P:やめてくれ…。

B:じゃあ、ママは彼に会ったことあるの?

V:そうよ、とっても可愛いの。自慢の息子2人よ。今日はお友達も連れてきたのね。ママに紹介してちょうだい、ピップ。

P:……。(地獄だ…)


A:シャマル、大丈夫?

S:生ヴァレリー拝むとかマジ緊張したわ…。おまえの将来のママだろ?すげーな。

A:そうなるといいけどね。

S:なるって!フィリップを見てみろ、おまえに夢中なのが一目で分かる。

A:そう!?どのあたり!?

S:いきなり食いつきすぎだろ!だって、俺を見るときの目と全然違うぜ。まるで恋するティーンエイジャーの女の子だな。

A:そっかぁ……フィリップが…。

S:(こいつはこいつで、フィリップがいると空気の抜けたサッカーボールみてーになってるし)

アレックスの部屋 後日

A:ねえ、フィリップ。僕らの新しい部屋の件なんだけどさ、ここなんてどう?2人ではちょっと狭いかもしれないけど、ダウンタウンに近くてアクセスも良いのに、家賃はそこそこなんだよ。ペットもOKだから、もし何か飼いたくなっても大丈夫だね。君は動物好き?

P:ああ。どれかっつったら猫かな…。ただ、ママが猫アレルギーで飼ったことないんだ。
犬も好きだけど、オレは寄宿学校生活が長かったし、実家に帰ってもこんな仕事だろ?散歩に毎日連れて行ってやれないのがかわいそうで、飼ったことは1度も無い。

A:なるほどね。うちは特に母さんが犬好きなんだけど、父さんが犬アレルギーだから飼えなくて。僕も何も飼ったことないんだ。

P:そっか…。ま、アレルギーは仕方ないよな。

A:うん。そうだ、このアパートは屋外にグリルが何台かあるから、今度はそういう場所でみんなとパーティーするのもいいね。

P:それは良いけどさ、今度はママと姉ちゃんたち抜きでやろうぜ。

A:どうして?楽しくなかった?

P:楽しかったけど…、オレとおまえのことをやたら聞きたがるんだよ。

A:話せばいいのに。僕は気にしないよ。

P:おまえは良くてもオレがヤなの!

END

(200515)