フィリップとアレックスが自分たちの関係を公にした直後のお話。
登場人物
P:フィリップ
A:アレックス
S:シャマル
ジェイドの部屋
J:(今日も疲れた…。あのバイトもうやめよっかなー…。給料そんなに良くないし、客にセクハラオヤジ多すぎでしょ。マジでムリ。
あっ、アルの『Lovefolio』更新通知来てる。もうお隣さんではないけど、スマホさえあればいつでも目の保養できるもんね。いまだに私の癒しだよ~。今日はどんな写真かな?
……ん?アルがハグしてるこの赤毛の彼、どこかで見たことある。誰だったっけ…。キャプションに何か書いてあるみたい…)
『彼は僕の人生の大半を占めている』
ハァアッ!?なっ…、どういうこと!?なにこれ!?
(ハッシュタグも『#love』だけ…。えっ、じゃあ…”そういうこと”?アルの同棲相手ってまさかこの人?…ってか誰よ、この可愛い系!?あ、アカウントがメンションされてる…。『@phillip_belair』…)
J:(そっかー…ヴァレリー・ベルエアの息子…。思い出した。彼とカップルって設定で撮ってた企画あったもんね。あの雑誌買ったわ、アル目当てで。アルのことばっかり見てたから、相手役のことが記憶から完全に飛んでた。あれで仲良くなったのかな?それとも、その前から?どっちにしろ最初から負けてたんだ、私…。
写真の2人…すごく良い笑顔だな。アルの笑顔にずっと癒されてきたけど、こんな笑顔を向けられたこと、1度もなかった。でも、アルが彼と一緒にいてこんなに幸せそうなんだもん。もうそれだけで十分だよね…。なんだか一気にスッキリした!部屋の掃除でもしてから寝よう)
翌朝
J:(…昨夜のアレ、夢だったりしないよね?
…ハイ、夢じゃありませんでした!それにしても、一晩ですごい数のハートついてる。コメントも300件以上…すごっ…。みんな祝福モード全開だ。私がフォローしてる他の俳優やモデルたちまで…。
そうだ、モデルと言えば、あの日ぶつかったイケメン!タイムラインに埋もれてすっかり忘れてた。彼のアカウントもフォローしてたんだった。更新通知の設定してなかったけど、親切そうだったし心配もしてくれてたから、ちゃんと一言お礼言わないと)
J:“こんにちは、ラティーフさん。突然のメッセージ失礼します。私はジェイド・ウィルキンス。以前、サファリの西10番街を走っていてあなたとぶつかった者です。あのときは、私の不注意で迷惑をかけて本当にごめんなさい。そして、心配までしてくれてありがとう。ケガはしていなかったから安心してください”
(よし…こんなものかな。送信…っと。私のことなんてもう覚えてないかもしれないけどね)
通知音
J:えっ、もう!?返信早っ!!
シャマルとジェイドのメッセージ欄
S:はじめまして、じゃないけど、はじめまして。君がこんな綺麗な名前だったなんてな。名前を聞かずに別れたのを、ずっと後悔してたんだ。メッセージもらえて本当に嬉しいよ!ありがとう、ジェイド。
J:こちらこそ、返信ありがとう。いきなりぶつかってしまったけど、あなたにもケガをさせなくて本当に良かった。メッセージを送るのが遅れてごめんなさい。
S:気にしないで。それより、あのときはどうしてあんなに急いでいたんだ?もし嫌じゃなければ教えてくれ。
J:あれは…失恋した直後だったの。相手はあなたと同じようにモデルで、私の一方的な片想いだったんだけどね。
S:そうか…。辛いこと聞いちゃってごめんな。
J:いいの。私が、ちゃんと前を見ずに走ってたのが悪いんだから。
S:その…相手の名前、聞いてもいい?モデルってことは、もしかしたら知ってるやつかも。
J:彼の名前は、アレックス・シルバラード。実は、彼が以前私と同じアパートに住んでいたことがあって、そこで好きになったの。
S:マジで!?アルなら俺のダチだぜ!同姓同名のモデルが市内にいないならな。じゃあ俺たち、知らずにどこかですれ違ってたりして。あいつの部屋には何度も遊びに行ってたから。
J:ホントに!?
S:マジ。あいつがモデル始めてすぐだから、もう2年くらいの付き合いになる。失恋ってことは、あいつに告ったの?
J:ううん、本人から聞いたの。「恋人と同棲する」って。
S:ああ、なるほど…。
J:あっ、でもアルと友達なら、私が彼に片想いしてたことは絶対に話さないで!お願い!
S:もちろん。君がそう望むなら。
J:ありがとう。
S:あいつ、モテまくるくせにそういうとこ鈍いからなー。なんていうか、ごめんな。
J:あなたが謝ることない。私は、もう吹っ切れてるからいいの。それに、昨夜アルがアップした写真を見て、すごく幸せそうだったからほっとしてるくらい。
S:ってことは、君もあの写真見たのか。
J:フィリップ・ベルエアとのツーショットね。同棲のことを聞いたときには、相手は誰だか聞かなかったからビックリ。まさか、私の憧れの人の息子だったなんて。
S:君、ヴァレリーに憧れてるの?
J:そう。ヴァレリーみたいな俳優を目指して、ワイオミングからACに出てきたんだ。今のところ、ぜーんぶ空回りだけど。
S:そうだったのか。俺、フィリップともダチだし、ヴァレリーにも会ったことあるから、君も彼女に会えないか頼んでみようか?
J:エェッ!?スゴい!!そんなことできるの!?
S:ただ、彼女のスケジュールが詰まってるだろうからなー。君さえ良ければ、サインだけでも貰えるよう頼んでみるよ。
J:そんな…。夢みたい。ありがとう、ラティーフさん!
S:俺のことはシャマルでいいよ。
J:それなら、私のこともジェイって呼んで、シャマル。
S:それじゃあ、ジェイ、あれからまだフリーなら、今度ヒマなとき俺とコーヒーでも飲まない?君のことをもっと知りたい。
J:えっと…。
S:もちろん、デートのつもり。君は俺のラッキーガールなんだ。他のやつには渡したくない。
J:ラッキーガール?
S:その話は、今度会う時にしたいな。いつなら会ってくれる?
J:誘ってもらえるのは正直とても嬉しいけど、今はバイトやレッスンで忙しくて…。スケジュール空いてるときがあったら連絡するね。
S:分かった。ありがとう、ジェイ。体に気をつけて。俺の電話番号を書いておくから、いつでも連絡くれ。
J:(……なにこれ現実…?私がシャマルのラッキーガールってどういうこと…?……とりあえず、もっとシフトの融通きくバイト探そ…)
フィリップとアレックスの部屋
S:――ってことで、頼みますうぅぅ~~フィリップ様っ!1枚でいいんだ。ママからサインもらってきてくれね?
P:いいよ。あんたはママとも会ったことあるから誰だか分かってるし、すぐくれると思う。もともとママはファンサービスしまくるタイプだしな。
S:そうなのか?
P:ファンにサインしたり自撮りに付き合いすぎたせいで予定押しまくって、アシスタントのサイラスたちにしょっちゅう引っ張られてるぜ。
A:彼女らしいね。
P:だからオレとしても、ママのスケジュールさえ合うなら2人を会わせてあげたい。
S:マジかよー!?やったぜ!!今度メシおごらせてくれ。ああ言った手前、サインすらもらえなかったらカッコつかねーし、内心すげーハラハラしてたんだ。はぁ~…ホントにありがとな。
P:気にすんなって。よっぽど好きなんだな、彼女のこと。
A:みたいだね。良かったじゃないか、シャマル。
S:ああ…。(彼女のアルへの想いはこいつらに言ってねーけど、ああやって影で泣かせてきた子がまだいるんだろうな…クソモテ男め…)
A:それにしても、ジェイがあのラッキーガールだったなんてね。
S:そ、そうそう。それな。俺がモデルやってると知った彼女が、「モデルがお隣さんだったことある」なんて言うから、聞いてみたらおまえでさ。あれは驚いたぜ。
P:すごい偶然だよなー。これが運命ってやつか。
A:僕とフィリップみたいだね。
P:なっ…!
S:さらっと惚気るのやめて?
A:でもさ、シャマル…、ジェイを誘うのはいいけど、テキトーに遊ぶのだけはやめてくれよ。
P:?
S:どういう意味だよ。
A:あの子はとても純粋というか…夢に向かって毎日頑張ってる本当に良い子なんだ。がんばりやで、見てて心配になるくらいね。僕にとっては妹みたいな存在で、すごく励まされてた。だから、彼女を弄んだりはしないでほしい。
P:…だってさ。
S:ニヤつくな、フィリップ。言われなくたって、んなことしねーよ。
A:ならいいけど。あともう1つ。
S:なんだよ、まだあんのか?
A:もしジェイと本気で付き合いたいなら、彼女の父親や2人いるお兄さんたちとも上手くやっていかなきゃならないと思う。彼女はワイオミングの牧場で末っ子として大切に育てられたから、都会に出てくるときは彼らから猛反対されたんだ。
P:あー、そりゃ特に父親は心配でたまらなかっただろうな。
A:そう。今でもたまに、彼女を心配してワイオミングから代わる代わる訪ねてくるくらいだからね。娘や妹に悪い虫がついてないかって。
P:へぇ~…悪い虫ね…。
S:おい、なんだよその目は。
A:1度だけ彼らを見かけたことあるけど、3人ともすごい筋肉なんだ。ジムに通ってる僕なんかと比べものにならないくらい。最初は、ジェイにレスラーの知り合いがいるのかと思ったよ。
S:わーかった、わかった!脅すなよ、アル!
A:脅しなもんか。僕は事実を言ったまでさ。
P:ご愁傷様。
S:オイオイ、俺はまだ彼女の手すら握ってねえだろーが!デートだってできるかどうか、まだ分かんねーんだぞ!?
END
(201230)