『Departure』の後日譚。フィリップとアイザックが出会ったときのお話。

登場人物

フィリップ

アレックス

Ⅰ:アイザック(ザック)


レストラン 店内

Ⅰ:いやぁ~、ワリぃなアレックス。マジでおごってくれるとは。

P:こいつ、こういうとこはほんとマジメだから。

A:さあ、遠慮せずなんでも好きなものを頼んでくれ、アイザック!もちろんフィリップもね。

I:しかし、フィルがこんな出来の良いカレシ捕まえるとはな~…。元ルーミーとして感慨深いぜ、俺様も…。

P:…うるせぇ。

A:ねぇ、ルームメイト時代のフィリップの話を聞かせてよ、アイザック。

I:おおっと、それ聞いちゃう?とっておきのがいろいろあるぜ~?どれからいく?

P:なっ、やめろザック!

A:じゃあ…フィリップとの出会いは?君と幼なじみだってことはよく知ってるんだけど、あまり詳しくは話してくれないからさ。

P:そんなもん聞いてもしょーがねぇだろ。…おいザック…余計なこと言うなよ。

I:OK、聞いてくれよイケメンくん。こいつと初めて会ったのは、俺らが11歳の時でさ…――。

寮の一室 回想

I:よーぅ!おまえがフィリップ?俺が今日からルームメイトになるアイザック・ブルーだ。よろしくな。ザックでいいぜ。

P:……よろしく。

I:暗ッ!!え!?暗くね!?フィルさぁ、そんなんで他のやつとうまくやれてんの?

P:うっせぇな、おまえに関係ねーだろ。あとフィルって呼ぶな。

I:ま、ここに入ってんのは俺らと同じでたまたまセレブの家に生まれちまったクソガキだらけだし、そこまで馴れ合う必要もねぇけどな。ただ、ガキのうちからコネ作りと営業スマイルは覚えといて損しねぇじゃん?特に俺らはさ、な?フィル。あ、でも俺ってば、なーんでもすぐ口に出ちゃうタイプだからなぁ〜、なっかなかムズいんだけど~!

P:(……マジでうるっせぇな、こいつ…。どんだけしゃべるんだよ…)

I:そういやおまえ、ヴァレリー・ベルエアの息子なんだって?

P:……だから?

I:いや、俺の親父――アンソニー・ブルーって超イケてる俳優知ってっか?おまえのママと俳優仲間で仲良いんだよ――が言うにはさ、おまえのママから「今度おたくの息子とうちのフィリップがルームメイトになるらしいからよろしくぅ~♡」って頼まれたんだって。俺様、いきなり責任重大よ。

P:(ママがそんなことを…)ふん…、オレの世話係にってか?

I:は?なわけねーだろ。てめーの世話くらい、てめーでしろ。

P:

I:俺は、おまえの新しい友達。今日から俺らは友達だ。ほら、握手。

P:な…っ、勝手に決めんな。…ってオイ!手ぇ離せ!!

I:ヘヘッ、これでもう友達だな。

P:ハァ!?おまえの友達基準どうなってんだよ!

I:友達だから、困ってるときは手を貸す。俺様になんでも言えよな。それじゃ、部屋の使い方ルール決めようぜ!

レストラン 店内

A:なんだか僕と出会ったときと似てるね。11歳のフィリップかぁ…可愛かっただろうなぁ…。

P:べつに可愛くねーよ。

I:マジでクソナマイキなガキだったわ。

P:いや、おまえもだろ!?

I:それがさアレックス、こいつときたら「寮なんかやだぁ〜ママに会いたいぃ〜」ってベソかいてやんの。

A:そうなの!?

P:ウソつくな!!

I:シーッ!もっと声落とせって!

P:ぐっ…。

寮の一室 回想

I:フィル、おまえ冬休みはどうすんの?どっか行くのか?

P:いつもは…コート・ダジュールに家族で行くんだけど、今年はママの撮影が入ってて全員集まれねぇし…、つっても姉ちゃんたちはスタッフと一緒に行くみてぇだけど。どっちにしろ、オレは行かねぇ。

I:死んだ親父さんの親戚は?

P:パパの実家はみんな早死にだから…交流無ぇよ。

I:んん〜…そっか。じゃあさ、オレんち来いよ。

P:おまえんち!?いや、悪ィって。家族だけで集まるんだろ?

I:なんだそれ。合衆国憲法にでも書いてあんのか?ホリデーは大切な人と集まって過ごすもんだろうが。

P:(大切な…人…)

I:よーっし、決まりな!ばあちゃんにチェリーパイ作ってもらお。くっそウマくてビビるぞ、フィル。あとクッキーもめちゃくちゃウメぇの。

P:…いいのか?

I:なにが?

P:オレなんかが行っても。

I:なーにスネてんだよ。おまえ最近元気無ぇよな。……あ、分かっちまったぞ、ママに会えねぇからだろ。

P:ハァッ!?んなわけねーだろ!!ガキじゃねぇんだぞ!

I:いや俺らまだ12歳になったばっかだし。十分ガキじゃね?

P:……。

I:なあ、そういうときはこれ聴けよ。元気出るぞ。

P:…スペイン語の曲?

I:ポルトガル語。俺の母ちゃんが歌ってんの。

P:おまえのママが?(…たしか歌手やってて、何年か前に病気で亡くなったって…)…パワフルな声だな。なに言ってんのかは分かんねぇけど…。

I:だろ?すんげー明るい曲だけど、内容はひでぇ大失恋なんだぜ。ウケるよな。

P:……あのさ、…ありがとな、ザック。

I:え?

P:元気出た。冬休みにおまえんち遊びに行っていいか、サイラスに聞いてみる。

I:おお!サイラスっておまえのママのアシスタントだっけ。

P:そう。

I:じゃあ、ばあちゃんにとびきりウマいパイ作ってくれるよう頼んでおくな!

P:ああ、楽しみにしてる。

レストラン 店内

A:…それで、冬休みはアイザックの家で?

P:そう。

I:こいつがまた食うわ食うわ。何日ぶりにメシ食ったんだよってくらい。ばあちゃんも驚いて呆れてたわ。

P:ばあちゃんのパイは世界一ウマいんだから仕方ねぇだろ。

I:まーな。無限に食える。

A:あれは絶品だったよね。(幼い頃から親元を離れて暮らすなんて、フィリップには相当さびしくて辛い体験だっただろう…。彼がそばにいてくれて本当に良かった)アイザック…、本当にありがとう。

I:今さらまたチェリーパイの礼ってマジメすぎねぇ!?今日なんておごってもらうの俺だし、むしろこっちがサンキューですけど??あとさ、もう俺らダチなんだし、ザックって呼べよ。

P:そうしろよ、アル。

A:うん…!これからもよろしくね、ザック。

Ⅰ:おう!

END

(230127)