フィリップとアレックスが2度目のデートをするお話。回想部の台詞は会話集『Friend zone』の引用(※漫画版『Friend zone』では一部改訂あり)
登場人物
P:フィリップ
A:アレックス
買い物中 アパレルショップ
A:フィリップ…、君は誰かに一目惚れってしたことある?
P:一目惚れぇ~?んー…、オレはねえな。
A:……そっか。
P:ま、ヒトじゃなくモノにならあるか。服とかさ、ビビッとくるときあるじゃん。おまえは誰かに一目惚れしたことあんの?
A:え?…えっと…あるよ!昔、ある女の子にね。(本当は、君にしかしたことないけど…)
P:マジで?そんときは上手くいったのか?
A:デートは…1度だけした。デートと言っても、僕はそのつもりだったんだけど、相手はどう思ったのか分からない。ただ買い物と食事に付き合ってくれただけなのかも。
P:1度だけって…じゃあ続かなかったってことか?でも誘いを断らずに遊んでくれたなら、ぜってー脈あったろ。
A:そうかな…。
P:自信持てよ。おまえならいつだってチャンスあるだろ。オレに寄ってくるのなんて、売名目当ての子ばっかだったからうらやましいぜ。
A:そうなの?
P:ああ。昔、仲良い女の子がいて、けっこう本気で好きだったんだけどさ…。その子も、オレと付き合って名前売るのだけが目当てだったって人づてに知ったときは、しばらく女の子に近づくのも怖かった。
A:…そんなことが…。それはつらかったね…。
P:こんな業界だから相手の気持ちも分かるし、もう気にしてねーよ。それに比べて、おまえはガチでモテるよなー。なんかフェロモンみたいのが出てたりすんのか?ちょっと嗅がせろ。
A:…えっ?(うわっ…!近い近い!そんな近づかれたら…!)
P:別に何も匂わねえな…香水みたいな匂いがするくらいで。どんな香水つけてんの?
A:(一瞬で体温上がった…心臓に悪いよフィリップ…)いや、…今日はつけてないよ。
P:マジで?ウソだろ?(やたら良い匂いしたけど……まさか体臭ってことか?)
A:君が嫌いな匂いだったらと思って…なにもつけてない。シャワーは浴びたから、ボディソープの匂いじゃないかな。
P:ああ…そうかも…(いや、そういうのとはまた違う匂いだと思うんだけど…)。つーか、男と会うのに香水の匂いなんか気にすんなって。おもしろいな、おまえ。
A:だって、君に嫌われたくなかったんだ…。
P:!?……いや、んなことで嫌いになったりはしねえから。
A:そう?よかった…!じゃあ今度、どんな香水が好みか教えて。
P:オレの好みなんか知ってもしょーがねーだろ…。それにオレ、そんなに香水つけねえしな。あんまり好みとかねえぞ。
A:ウソだよね!?こんなに良い匂いがするのに!?
P:えッ、オレなんか臭ってんの!?
A:いや、全然臭くないよ!ただ、いつもすごく良い匂いがしてるんだ。だから、香水をつけてるとばかり…。
P:いやいや、オレもなんもつけてねーし。
A:そうなの?不思議だなあ…。
P:ははっ、フェロモンだったりして。でもフェロモンって匂いすんのかな?
A:同性だと感じないらしいと聞いたことがあるけど。
P:じゃあなんなんだろうな、オレらの場合…。
A:うーん…体臭?
P:お互いに臭くねえなら、それでいいか。
A:そうだね。
P:フェロモンといえばさ、この前オレらが撮影したときなんて、スタッフが何人もおまえのこと見てとろ~んとしてたぞ。あれって、おまえのフェロモン効果じゃねーの?特にあの…誰だっけ、名前わかんねーや…おまえのメイク担当してたブルネットの子いたろ?ずっとおまえにアピってたじゃん。覚えてねえ?
A:あのときは、他のことに夢中になってたから…あんまり覚えてない。
P:なんだよ、もったいねーの。けっこー美人だったぞ。
A:フィリップは、付き合ってる相手や気になってる相手はいるの?
P:…オレ?
回想 AC市内のある公園
I:…ちょっとまて、なんだよフィル、もしかしておまえもそいつのこと好きだったりすんのか?
P:……んなわけねーだろ。男なんか好きになるかよ…。
I:…フィル、女の子は好きになったことあんだろ?恋愛相談受けたこと何度かあるからな、無いとは言わせねーぞ。ぜんぶ友達止まりに終わったけど。
P:うるさい。
I:そん時どんな感じだった?その子のこと考えて頭がいっぱいだったんじゃね?
P:……それは…。
I:今も同じだろ?それが恋じゃなかったら、もはやなんだっつーのよ。別にそいつがウザくて憎くて頭がいっぱいってわけじゃねえんだよな?
P:いや……、特に今はいない…かな。
A:ほんとにッ!!?フリー!?
P:なんだよ急に!?そんな驚くことか!?
A:ご、ごめん、ちょっとびっくりして。てっきり、いろんな子と遊んでるのかなって…。
P:おまえさぁ…オレのことすげーチャラいやつだと思ってんだろ。さっきも言ったけど、オレそんなモテねーし…、ぶっちゃけ女の子に声かけんのも苦手なんだよ。
A:そっか…、そうなんだ…。(よかった……本当に嬉しい。思わず叫ぶところだった)
P:(すげー嬉しそうな顔してる…)なにニコニコしてんだよ。オレがモテねーのがそんなに嬉しいか?
A:いやっ、そうだけど、違っ、そうじゃなくて!
P:なんなんだよ一体。
A:イメージと違ったから、驚いただけなんだ。ごめん、気にしないで。
P:ふーん…。あ、そうだ。
A:なに?
P:おまえさあ、このあとまだ時間ある?
A:うん。君とだったら、どこでも付き合うよ!
P:お、おう…。じゃあさ、一緒に靴見てくれね?スニーカー欲しいんだよな。できればメシも食いてえし。つっても、まだ4時だけどさ。
A:もちろん!(本当は明日の朝までだって、ずっと一緒にいたいけど…。いきなりそんなこと言うわけにはいかないよな…)
P:サンキュー。この近くにいくつか靴屋あるし、近いとこから見ようぜ。
A:うん、そうしよう!(嬉しい…。フィリップともう少し一緒にいられるんだ…!こんな時間がずっとずっと続けばいいのに…)
P:じゃあ行くか。(さっきからガキみてえにはしゃいでるな、アルのやつ。……オレも…こいつといるのはめちゃくちゃ楽しい。前回会ったときよりも、もっと――)
路上
A:あ、ちょうど信号青だよ。ここ渡るの?
P:そう。ここ渡って、あの角を左に曲がった先だ。
A:フィリップ、もしかしてそのお店って…白いラインが縦に1本入ったネイビーブルーの建物?
P:そうそう、そこ!なんだよアレックス、おまえ知ってんの?
A:それなら僕も何度か行ったことあるよ。店員さんも感じ良かった。
P:ムダに話しかけてこねーんだよな!最新作は常に揃ってるし。だからオレも気に入ってんだ。
A:良い靴が見つかるといいね、フィリップ。
P:…!ああ、だな。(アレックス……女の子とデートしてるときも、こんな感じでいつも優しかったんだろうな…。って、なんでんなこと気にしてんだ、オレ……。…やっぱりザックの言ってた通り…、こいつのこと――)
END
(200707)